2010年代から急成長したGAFAMはS&P500指数やNASDAQ100指数の中核として牽引してきたといっても過言ではないでしょう。
しかし、2022年に入るとロシアのウクライナ侵攻をきっかけに高インフレ時代に突入し、政策金利の急な引き上げが必要となります。すると、金利が重しとなってインデックス投資の王道と呼ばれるS&P500指数は-19.44%、ハイテク株が中心であるNASDAQ100指数は-32.97%と大幅に下落しました。
本当にGAFAMのような大型株への投資は大丈夫なの?
そんな疑問を持っているあなたに「株式投資の未来」は非常にオススメな本となっています。
株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす
こちらの本を読むことで下記のようなメリットがあると考えています。
- 多くの投資家が陥りがちな成長の罠を学ぶことができる
- セクター戦略・インデックス投資など長期資産運用の基本的な考え方を身につけられる
- 市場平均よりも高いリターンを狙えるようになる
「株式投資の未来」の結論
- 20年以上の長期投資なら株式投資が一番良い
- 高配当株はハイパーグロース株に勝てる
- 暴落は最高のリターンをもたらすチャンス
- 米国株投資の未来は明るい(高齢化を心配する必要なし)
- インデックス投資からD-I-V投資へ
「株式投資の未来」とはどんな本?
副題 : 永続する会社が本当の利益をもたらす
原題:The Future for Investors
出版社:日経BP (2005/11/23)
単行本:345P
著者:ジェレミー・シーゲル
翻訳:瑞穂のりこ
キーワード:成長の罠、黄金銘柄、高齢化危機、D-I-V指針
Amazonカスタマーレビュー:4.4(2023/05現在)
通称「赤本」と呼ばれ、米国株投資の長期投資におけるバイブルともいえる名著です。インターネット・バブル崩壊後の2000年代の米国株式市場を背景に著されています。
シスコ、マイクロソフト、インテル、DELL、サン・マイクロシステムズなど2000年問題をきっかけに高騰に湧いたハイテク銘柄が鳴りを潜めて、11,000$台を超えたダウ平均が8,000$台まで落ち込んだ時期です。
長期資産運用の基本的な考え方、急騰する注目株投資への警鈴『成長の罠』を記しています。
著者 ジェレミー・シーゲル氏 とは
100年以上の歴史持つ、名門ペンシルバニア大学ウォートン校の教授です。ウォートン校は、米国が初めて設立したビジネススクールとして知られています。金融を中心にマーケティング・マネージメント分野のプログラムが充実しており、ドナルド・トランプ大統領や、起業家イーロン・マスク氏も本校の卒業生です。
シーゲル教授は金融分野の専門家であり、CNN、CNBCなどのメディア出演もしている著名人です。ウォール・ストリート・ジャーナル、バロンズ、フィナンシャル・タイムズ(FT)のコラムニスト。JPモルガンでの教育研修トレーニングを担当。1945年 イリノイ州シカゴ出身、2023年5月時点で77歳。本書は50代の頃に出版した書籍となります。
本書以外の出版物は、【株式長期投資-Stocks for the Long Run】(通称 緑本) があります。1994年に出版しており、2009年に第4版まで改定されました。緑本は、本書の基礎である「なぜ、長期投資なのか」を丁寧に記されていますが、買うのであれば赤本をおすすめします。
株式投資 第4版
「株式投資の未来」の目次
本書は、大きく5部で構成されています。
第1部「成長の罠」を暴く 第1章 成長の罠 第2章 創造的な破壊か、創造の破壊か? 第3章 時に裏打ちされた価値 -黄金銘柄を探して- 第4章 成長すなわちリターンにあらず -成長セクター投資に潜む罠- 第2部 過大評価される成長株 第5章 バブルの罠 -市場の多幸症をどう止め、どう避けるのか- 第6章 新興の中の新興に投資する -新規公開株(IPO)- 第7章 資本を喰う豚 -テクノロジー:生産性の源泉にして価値の破壊者- 第8章 生産性と収益 -負け組業界の勝ち組経営陣- 第3部 株主価値の源泉 第9章 金をみせろ -配当とリターンの企業統治- 第10章 配当再投資 -下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセル- 第11章 利益 -株主リターンの源泉- 第4部 高齢化をめぐる危機と世界経済の力学シフト 第12章 過去は未来のプロローグか? 第13章 変えられない未来 -目前に迫る高齢化の波- 第14章 高齢化の波を乗り越える -役立つ政策、役立たない政策- 第15章 世界的解決 -真のニューエコノミー- 第5部 ポートフォリオ戦略 第16章 世界市場と国際ポートフォリオ 第17章 未来に向けた戦略 D-I-V指針
「株式投資の未来」はこんな人にオススメ
投資初心者から上級者まで、幅広い層の人におすすめの一冊ですが、特にこんな人におすすめです。
- 株式投資に慣れてきたが、「なぜなんだろう」という悩みをスッキリしたい人
- 長期的な視点で株式投資を行いたい人
- 高配当株投資を始めようか迷っている方
- インデックス投資か成長株投資を始めようか迷っている方
- 高齢化する先進国への投資が不安な方
20年以上の長期投資なら株式投資が一番良い
理由①:株式投資のリターンが優れている
下記の図では1801年に$1投資した場合、2001年にはどうなっているか確認ができます。株が最もリターンが大きく、インフレの影響によってドルの価値が減っていることもわかります。
1ドルの価値が減って最終的には0.07$になっているのはとても意外でした…
理由②:株式投資は20年以上の長期投資ならば、国債よりもリスクが低い
1〜2年の短期では高リスクとなっていますが、20年以上保有し続けると国債以下の低リスクとなります。
長期投資前提なら国債よりも株式投資がベストですね!
高配当株はハイパーグロース株に勝てる
理由①:配当の再投資によるトータルリターンが優れている
1950年~2003年までのIBMとスタンダード・オイル(現エクソン・モービル)の比較より、スタンダード・オイルの方が株価上昇率では負けていますが、配当の再投資によるトータルリターンは勝っています。
騰落率だけではなく、配当を含めたトータルリターンの良い銘柄を探したいですね
理由②:低PER株がS&P500指数よりも高いリターンを誇る
1950年~2003年までの S&P500の低PER株グループと高PERグループを比較すると、低PER株のグループが一番トータルリターンが高いことがわかりました。しかもS&P500より高く、リスクも低いのです。
1950年~2003年までの トータルリターン上位20銘柄は、S&P500よりも少しだけPERと配当利回りが高い銘柄でハイテク企業、電気通信企業は1社も含まれていません。
PERが余りにも高いグロース株は短期目線が良いかもしれませんね
暴落は最高のリターンをもたらすチャンス
理由:配当は下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセルになる
フィリップ・モリスのケースでいうと1992年から2003年にかけて大きな浮き沈みがあったが、一度も減配しておらず、それどころかほぼ毎年増配していました。下落すると配当利回りが上昇するため、配当を再投資することで株数を増やすことができます。保有株数が増えるほど将来のリターンが加速する。つまり、再配当投資は、下落局面でプロテクターとなり、株価が上昇に転じれば「リターンのアクセル」となります。
このようなチャートでもトータルリターンではS&P500よりも上回っている点に注目ですね
米国株投資の未来は明るい(高齢化を心配する必要なし)
理由:ブランドネームのある先進国の経営やマーケティング、技術のノウハウが魅力的
インドや中国といった発展途上国が高成長すれば、発展途上国はモノと引き換えに受け取るドルや円やユーロの使い道を探し始めます。すると、ブランドネームのある先進国の資産が魅力的となり、引き続き米国株が上昇する構造が成り立ちます。
インドの紅茶大手であるタタ・ティーが英国大手テトリーを買収、中国のレノボがIBMのパソコン部門を買収した例があり、モノとカネの交換が進みます。そして、高齢化する国々の退職年齢が引き下げられ豊かな余生を過ごすことができます。これを世界的解決(グローバル・ソリューション)と言います。
先進国の中でも特に米国株の未来はまだまだ明るい!
インデックス投資からD-I-V投資へ
本書では高配当株をオススメとしていますが、インデックス運用を株式投資のコアにすべきという考えに変わりありません。ただインデックス・ポートフォリオに補完戦略を組み合わせることで、さらに高いリターンを狙うことができると説明しています。その補完戦略を「D-I-V」指針と読んでいます。
D-I-V指針
配当(Dividend)
個別銘柄の選択にあたっては、持続可能なペースでキャッシュフローを生成し、それを配当として株主に還元する銘柄を選ぶ。
国際(International)
世界のトレンドを認識する。このままいけば、世界経済の均衡が崩れ、中心は、米国、欧州、日本から、中国、インドをはじめ途上国世界へとシフトする。
バリュエーション(Valuation)
成長見通しに対してバリュエーションが適正な株を買い続ける。IPOや人気銘柄は避ける。個別銘柄であれ業界であれ、市場の大勢が「絶対に買い」とみているうちは、買わない。
第5部 未来に向けた戦略-D-I-V指針(P.278)より引用
シーゲル氏が推奨する株式ポートフォリオ
インデックスをコア(50%)とし、リターン補完戦略として、高配当・グローバル・セクター・バリューそれぞれに(10〜15%)分散投資することを推奨されていました。
いま一度、自分のポートフォリオを見直してみよう!
終わりに
まとめ
- 20年以上の長期投資なら株式投資が一番良い
- 高配当株はハイパーグロース株に勝てる
- 暴落は最高のリターンをもたらすチャンス
- 米国株投資の未来は明るい(高齢化を心配する必要なし)
- インデックス投資からD-I-V投資へ
今まで読んできた投資本の中でも素晴らしい良書でした
しかし、「株式投資の未来」はリーマンショック前の2005年に日本で発売されており、情報が古いといったデメリットがあります。例えば本書でIT業界を代表する銘柄、成長株として紹介されているIBMも今では高配当株の仲間入りをしています。
確かにGAFAMが勢いづいたのは2010年代からだし、情報が古いのは気になるね…
とはいえ、配当再投資の効果は昔から変わっておらず、たばこや石油セクターは変わらず高配当株が多く今でも役に立つ内容ばかりです。長期投資では株価だけではなく配当もリターンには重要な要素だと認識し、どんなときでも腰を据えて投資に取り組んでみましょう。
投資初心者から上級者まで幅広い層に読んでみてほしい
本書では多くの図表がよく出てきて、それらをみながらゆっくりと読み進めていく中でこれらの読んだ知識がどっしりと定着していく感覚と読み終えたあとの大きな納得感がありました。
ポートフォリオの大部分がグロース株ばかりになっている、インデックス運用だけでは物足りないと感じている方は本書を是非読んで、今後の投資戦略を見直すきっかけになれば幸いです。
お読みいただきありがとうございます。お疲れさまでした。
株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす